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2008/12/26

仕事納め

1年を振り返ってみると全然仕事してないことに気付く(←今ごろか).
やりたかったのにできなかった(かなり確信犯的だけど)ことを書いておこう:

  1. Option network 論文完成&投稿.
  2. Hazmat routing (査読で刎ねられたし)
  3. 計画的な予算の執行(特に科研費.処理されてからシステムに反映されるまでがこんな遅いとは).
  4. 金利リスク/期間構造と需要の不確実性を考慮した有料道路の償還計画.
  5. 集計とゆらぎの確率モデルの勉強(Large deviation theory に関する予備知識不足が原因).
  6. 都市経済学とか不動産関係にちょっかいを出す.
  7. SDF アプローチをベースにしたプロジェクト評価手法の実務向けテキスト/講義資料.
その一方で,学生と始めた研究/勉強は割と順調だったかも:
  1. ボトルネック通行権の予約システム(もうちょいのような気もするんだけど).
  2. 組み合わせオークションの勉強と,イベント座席オークションへの応用.
  3. 平均-分散経路選択モデルと,それを前提にした均衡モデル.
  4. Pricing Communication Networks に関する勉強.
  5. Kalman filter + リアル・オプション で多変数 option network の効率的・実務的解法を実現.
来年新しく始めたいなぁ,ということも書いておく.
  1. 可逆的意思決定がある場合,The explicit method の最適性条件との非整合性がオプション価値や最適ルールに与える影響の分析.
  2. Investment problem と financing problem の整合的な融合.要するに不完備市場下での option network 評価になるんだけど,売り手・買い手とか考え出すとややこしいので,とりあえつは効用最大化問題で entry-exit option の非線形ルール出すだけでもいい.Option network に動的な資産/負債管理を組み込んだり,なんかその辺.
  3. Option network モデルを試せる web application の開発.
さらにデタラメでもやれたら嬉しいことを書いておく.
  1. General equilibrium foundation of finance: structure of incomplete market models の勉強と費用便益分析への応用とか.
  2. 離散凸解析の勉強と,option network 問題の解の一意性やットワーク信頼性解析への応用とか.
  3. 海外嫌いを克服(今更ながら研究者にとって致命的のような気が).
あぁ,あと来年はもうちょっと更新頻度(と精度)を上げよう(←それが一番不可能).

2008/12/25

decision tree, influence diagram, real option 論文のいい加減なレビュー

  1. Smith, J. E. and Nau, R. F., Valueing Risky Projects: Option Pricing Theory and Decision Analysis, Management Science 41(5), 795-816, 1995.
  2. Lander, D. M. and Pinches, G. E., Challenges to the Practical Implementation of Modeling and Valuing Real Options, The Quarterly Review of Economics and Finance 38, 537-567, 1998.
  3. Shenoy, P. P., A comparison of graphical techniques for decision analysis, European Journal Operations Reserach 78(1), 1-21, 1994.
  4. Bielza, C. and Shenoy, P. P., A comparison of Graphical Techniques for Asymmetric Decisions Problems, Management Science 45(11), 1552-1569, 1999.
  5. Lander, D. M. and Shenoy, P. P., Modeling and Valuing Real Options Using Influence Diagrams, Working Paper No. 283, School of Business, University of Kansas, 1999.
  6. Charnes, J. M. and Shenoy, P. P., Multi-Stage Monte Carlo Method for Solving Influence Diagrams Using Local Computation, Management Science 50(3), 405--418, 2004.
  7. Keefer, D. L., Kirkwood, C. W. and Corner, J. L., Perspective on Decision Analysis Applications, 1990-2001, Decision Analysis 1(1), 4-22, 2004.
  8. Smith, J. E. and von Winterfeldt, D., Decision Analysis in Management Science, Management Science 50(5), 561-574, 2004.
[1] 単純な2期間モデルではあるものの,不完備市場でのリアル・オプション評価問題を扱っている.ただし,無裁定価格評価問題と効用最大化 portfolio 問題の双対性などについては触れていない(惜しいところまで来てるけどね).完備市場下においては investment problem と financing problem に分割できることを明示してる点は面白いが "the investment problem can be solved by option pricing methods; the financing problem is solved by decision analysis methods" とかって普通に変.

[2] ID が非循環であるとの記述発見:"Influence diagrams are ... graphical modeling tool, specifically Directed Acyclic Graphs..." (p.555).これは,多時点で半可逆的な意思決定(or costly reversible decisions/reversible decisions with hysteresis)を扱おうとすると,時点が増えるに従って diagram が簡単に爆発することを意味している.

[3, 4] Asymmetric decision とは「シナリオの数」が「状態変数や意思決定の分岐の直積の元」よりも少ない意思決定.real option 問題は通常 asymmetric.[3], [4] では,それぞれ,DT, ID, VN(valuation network)の長所・短所が整理されている.ID の長所はコンパクトなところです,という主張は [5] とか [6] のグラフを見れば嘘だと思える.

[5] IDを使って real opiton 問題を表現してみました的 working paper.Figure 4 とかTable 2を見れば,意思決定できる時点が増えるだけで問題を記述することすら極めて困難になることが自明.

[6] ID を Bermudan put option (満期前の離散時点のいずれかで行使可能なput.American の離散版)の評価に適用した結果が載っている.しかし,たかだか30時点の意思決定のために Monte Carlo で28,000回も計算するって一体…

[7] タイトル通り,意思決定分析の「対象」をレビューしている.p.14-15 に real option に関するセクション有り.最後の段落は[8]と同じような内容.

[8] 4章以下,次の3つのトピックに関する進展をピックアップしている:1) assessment of probabilities; 2) assessment of utilities; 3) game theory and competitive decision making.最後から2つ目のパラグラフに次の記述発見:"MS has published some papers that intergrate finance and decision analysis".

みんなファイナンス分野で培われた動的資産/負債運用技術と意思決定分析の融合に興味はあるけど,どやっていいかワカラナーイ,というのが現況やね.

2008/12/24

報告会

学生1:均衡モデルに興味をもってくれた(もたせた,というのが正しいか)ようなので,まずは利用者均衡モデルの等価最適化問題と potential game の関係を理解してもらうことに.
学生2:後日打合せ→DUE/DSO/DUE+通行権市場 の potential game としての解釈.
学生3:合同輪講打合せ.Strategy proof の証明は,以下の2つをきちんと説明すればいいはず:

  1. WTP よりも低い額を入札する場合,入札額を上げるインセンティブはあっても下げるインセンティブはない(ie. 入札額↑で勝率↑だが,入札額↓でも支払額は変わらない).
  2. WTP よりも高い額を入札する場合,入札額を下げるインセンティブはあっても上げるインセンティブはない(ie. 入札額↓で利得↑だが,入札額↑でも勝率は変わらない).
学生4:年内に4章まで読んでくれるとのこと.年明けには内容を確認.

2008/12/22

合同輪講

学生1は日本語頑張ったが,やっぱり事前に原稿はチェックしておくべきだったか.トップ・ダウンで発表を構成する訓練が必要かもしれない.

学生2の発表は格段に良くなった.学生の評判も良かった.用語を正確に使えるようになれば,学会発表もいけそうである(しまった.中身がまだだ).

学生3は理解してないのを発表できるわけもないので,手取り足取りでも論文の中身を解説する必要があったのかなぁ・・・

午後から個人ゼミ.どんな方法を提示しても,それを試してくれないことには改善しようがない.時には突き放すことも必要だとは判っているが,それでも危機感を持ってくれないのでは,というこちらの危機感を見透かされているような気もする.

2008/12/18

Influence Diagram とか Valuation Network とか

Intro 書くために graphical methods in decision analysis をざっとレビューする.

[1] Shenoy, P. P., A comparison of graphical techniques for decision analysis, European Journal Operations Reserach 78(1), 1-21, 1994.
[2] Bielza, C. and Shenoy, P. P., A comparison of Graphical Techniques for Asymmetric Decisions Problems, Management Science 45(11) 1552-1569, 1999.

あたりは Influence Diagram, Decision Tree, Valuation Network に関して割と網羅的に書いてあるし,

[3] Lander, D. M. and Pinches, G. E., Ghallenges to the Practical Implementation of Modeling and Valuing Real Options, The Quarterly Review of Economics and Finance 38, 537-567, 1998.

なんかは option-based approach と上記 graphical technique を対比させている.経営者は数学ギライだから real option approach は実務的じゃない,という主張は気に食わんが.

[4] Keefer, D. L., Kirkwood, C. W. and Corner, J. L., Perspective on Decision Analysis Applications, 1990–2001, Decision Analysis 1, 4-22, 2004.

は流し読みした感じではざっくり過ぎて参考にならないか.

2008/12/17

ううむ

Intro が書けない(またかよ).

午後イチに施設課とP棟改修に関する打ち合わせ.費用が講座持ちなのに施設課がタイルカーペットの色を決めるのは何故だ.

午後から学生と打ち合わせ.

大学は医者ではないので「やる気が出ない病」を治すことはできない.しかし,課題をこなす方法の代替案を提示することと,課題をこなせなかった学生を落第にすることはできる.そうしたサービスを利用するための授業料であり,そうしたサービスを提供するための給料である.そう思うしかない.

2008/12/16

合同輪講練習

学生1: 発表内容がとてもよくなった.提案手法を自分で試してみたりできる力がついたのが成功要因か.
学生2: 修正すべき点がいくつか見つかる.論文の内容はかなり理解できているが,トップ・ダウン型の発表構成になりきっていないのと,情報量が過多になる傾向がある.
学生3: 白紙ばかりでお話にならない.

2008/12/15

打ち合わせ・委員会

午前中は G のスライド打ち合わせ.Sandholm の論文は英語が秀逸で読み易い.

午後からインフラPFI委員会.公共事業の特性,経済リスク&非経済リスクの価格評価およびマネジメント,大規模かつ不可逆な投資,債権発行スキーム,契約&紛争仲裁など,様々な分野を有機的に融合する必要があり,大変興味深い.

2008/12/12

研究打ち合わせ+宮城先生研究会

朝から東北大へ.
論文打ち合わせは intro 全部を書き直すことで決定.
有料道路の償還計画問題は,混雑を考えない場合で解析解を求めてみることに.

午後から宮城先生還暦祝いの研究会.
交通工学の研究者は第4世代まで居るらしい.自分はさしずめ iRiver あたりか.

2008/12/11

教授会

午前中は L の研究報告.かなりの量だったので3分の1程度しかチェックできなかった.最初のうちは翻訳サイトを使っていたようで,全く意味をなさない文章がしばしば.英語の訓練にもならないし,翻訳サイトには大学内からアクセスできないようにしてくれないかなぁ

午後からは教授会と拡大企画委員会.終わってから明日の打ち合わせ資料を作成.ハマる.

2008/12/10

N 打ち合わせ

N とスライド内容について打ち合わせ.とりあえず各スライドのタイトルだけは決まった.

2008/12/09

Intro 書き直し

共著者から素敵なお達しを戴いたので intro を書き直すことに.

講義では Ito's lemma を説明したのだが,レポートにしないでその場で直接演習問題を解かせる方が理解度は高いようだ.

Sのスライドはだいたい出来てるかな,という感じ.研究は2つの方向でちょっと悩んでいる:
1) 交通情報を観測しながら日々経路を変更していくと,長期的には完全情報下での最適分散配分になるような variable scheme とか,そういう方向
2) ACO の収束性を potential game を使って証明し,実規模ネットワーク上で収束速度を検証.工学的研究って application とか実用的意義とかからじゃナイんですかとか,そういう方向

どっちもボチボチ弱い.

2008/12/08

打合せ+会議+会議+打ち合わせ

Gと打ち合わせ.

会議×2.代理で出た方がモツれた.うぅ.

Eと打ち合わせ.
内容は確認できた.売り手・買い手が2人づつの場合に限定して説明すると話が簡単そう.

書籍注文は4,000円払って生協の会員になれば「ほんやタウン」とかで注文できるようになるんだそうな.大学に出入りしてる業者は和書を扱っていないか,メールしても梨のつぶて.

2008/12/05

論文書いた

共著者に送った.校正サービスを受けるとなると,年内投稿はギリギリか…?

Nと打ち合わせ.3章がまだ読めていなかったので再度読むように指示.

2008/12/03

国の基準

公共事業とかに対して国が設ける基準とかルールって何のためにあるんでしょう.個々のケースに応じて担当者が判断する手間を省くためとか透明性確保のためという理由は分からなくもないが,ルール硬直的でかえって手間が増えるとか,そのルールが決まった経緯自体が不透明だとかってことの方が多い気がする.

2008/12/02

火曜日

P棟改修の打ち合わせ→講義→報告会コンボ.

昨夜2時までかかって option network 論文の introduction を書き上げた.ロジックは整理できたけど,まだちょっとボリュームが多いような気がする.まぁいいか.共著者の意見を取り入れて,定式化~最適性条件までは状態変数が任意次元の場合に拡張して書くことにした.一番の問題は添え字が足りないことですが何か.

どうせ一般化するなら,割引率とWiener 過程同士の相関係数を時間の関数としてみる.これらも確率過程として書けなくは無いんだろうケドなぁ…とか考えてると,何のための一般化だかわからなくなる.

2008/12/01

お別れ

偉大な数学者,伊藤清先生が去る11/10 に亡くなったそうです.伊藤先生が構築した確率過程論は,理論体系としての美しさと実用上の便利さの両方を兼ね備えたもので,その功績なくしては今日の制御工学や金融工学の発展はなかったでしょう.

折しも明日は経営情報論 II の中で確率過程について講義する予定です.先達の偉業を少しでも学生さんに伝えられたら,と思います.