非線形計画問題と potential game
Sandholm(2002)の面白い点.
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利用者均衡(UE: User Equilibrium)配分問題は等価な非線形計画問題[ENLP]として再定式化できる.この[ENLP]の目的関数(の正負を反転したもの) F(x) を potential function とする potential game [F] を考えるとき,[F]の Nash 均衡状態とはUE状態に他ならない.
このとき,potential game に対する以下の補題を用いれば,UE は利用者全てが「完全合理的で他の利用者の行動を完全に予測可能」でなくても,より自然な仮定の下で各利用者が myopic に行動を変化させた結果として実現することが保証される.
補題 1: potential game [F] について admissible な動学Δx(x) によって生成される解:
x(n+1)=x(n)+Δx(x(n))
のパス{x(1), x(2), ...}は [F] の Nash 均衡(の一つ)に収束する.
ここで,ある動学 Δx(x) が potential game [F] に対して admissible であるためには
- Δx は Lipschetz 連続である.
- x が解であり,かつそのときに限り Δx(x) = 0.
- Δx(x) の要素の総和は0である.
- xi=0ならば Δxi(x)≧0.
- x が解でない限り,Δx とpotential function F(x) の勾配 ∇F の内積は厳密に正である.
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以下は長江の放言.
この admissible であるための条件のうち,2.と3.は,生成されるすべての解{x(1), x(2), ...}がフロー保存則を満足することを意味しており,4)は,ΔxとΔFのなす角が90度以下であることを意味している.従って,Δx(x(n)) は,元の非線形計画問題[ENLP]を繰り返し計算で解くときの x(n)における許容降下方向に他ならない.
そう考えると,調整ダイナミクス Δx を非線形計画問題[ENLP]を群知能的に解くための各エージェントに対するルールとして解釈することもできるような.
書くのに時間かかったくせにオチが弱い.
Sandholm, W. H. (2002) Evolutionary Implementation and Congestion Pricing, The Review of economic studies Vol.69(3), pp.667-689.