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2009/08/05

一進一退

研究というのはいつもいつも前へと進んでくれるわけではない.

8/3
元の論文では均衡条件を「偏微分方程式制約つきの線形相補性問題(LCP-PDE)」として記述しているが,条件を丁寧につぶしていくと「非線形偏微分方程式(NLPDE)」に帰着する.NLPDEは差分近似すれば非線形連立方程式になるので,fsolve などの組み込み関数で解ける.解いてみたところ,変な振動解が得られる.

8/4
非線形偏微分方程式はおかしな挙動が出やすかろう,ということで,LCP-PDE を解いてみることに.制約条件の偏微分方程式をあらかじめ解いて線形相補性問題に代入すれば,非線形相補性問題(NCP)を得る.これを Yamada, Yamashita and Fukushima (1998) や Fukushima (1992) のアルゴリズムで解いてみたが,繰り返しの途中で merit 関数が減少しなくなる.もちろん,途中の解はぐちゃぐちゃ.

そこで,以前学生さんが作ったというプログラムをもらい,解析してみることに.

8/5
解析したプログラムでも実は問題が解けていない(途中で繰り返しを止めている)ことが判明.解決策を考えているうちに疑問が生じる.NCP の解の存在や一意性を保証するには,等価な変分不等式問題(VIP)の許容領域の凸性が鍵となる.この問題では許容領域が凸にならないのではないか,ということに気づき,workingpaper を作成.

行きつ戻りつしながら,数値計算をして,workingpaper を書いて,議論をして,問題点を見つけて,それを克服して,さらに先へと進んでいく.そういうプロセスには,研究の面白さが詰まっている.解けるかどうか判らない問題は,答えが判っている問題や,解けることが判っている問題の何倍も面白い(が,何百倍も大変).