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2009/06/10

講義アイデア

講義アイデアは完備市場の多期間モデルまで完成.

完備市場における

「プロジェクトの適切な取引価格」=「プロジェクト収益を模擬するポートフォリオの期首価格」=「リスク中立確率の下でのプロジェクト収益の期待現在価値」

という構図を,Cochrane (2001) の2期-2状態モデルを用いて説明する方法を工夫してみた:
1) 完備市場では,プロジェクトの期末収益と全く同じ収益をもたらすポートフォリオ(=模擬ポートフォリオ)が構築できる.
2) このとき,無裁定原理の下では,プロジェクトの期首価格と模擬ポートフォリオの期首価格は等しくなる
3) いま,期首価格が100であるような模擬ポートフォリオは無数に考えることができる.
4) これらの等価ポートフォリオの期末収益を2状態図上にプロットすると直線になる.
5) 期首価格が50である模擬ポートフォリオも無数に考えられる.当然,これらの期末収益は,4) に並行する直線となる.
6) 同様に,期首価格が 0, 10, 20, 30, ... となるポートフォリオの期末収益は,いずれも,並行な直線を描く.
7) これらの平行線に直交するベクトルは pricing kernel と呼ばれる.
8) ベクトルの内積の定義と期首価格の等高線の性質を用いれば,任意の資産の期首価格が,その期末収益(を2状態図上にプロットしたもの)とpricing kernel との内積に一致することが確認できる.

次に連続時間モデルと不完備市場モデルのどちらを考えるか迷ったが,Smith and Nau (1995) を読んで迷子ちゃんになりそうな学生のために,まずは不完備市場モデルを考えることに.